2025年7月号 Vol.220
目次
長期投資仲間へのメッセージ
セゾン投信株式会社
代表取締役社長 園部 鷹博
Vol.220
情報過多時代におけるインデックスファンドの理解
インデックスファンドは信託報酬が低ければ低いほうが良いのか
私たちが暮らす現代社会は様々な情報が溢れています。1970年頃から情報化社会と言われるようになり、1990年代以降情報通信技術が急速に発展しその後のインターネットやスマートフォンの爆発的な普及につながりました。
IT革命やAI革命など様々な名称が出てきますが、実際に情報量や通信量は飛躍的に増加しています。少し古くなりますが、ベストセラーにもなった「スマホ脳」(2020年・新潮新書)では毎日2.5京バイトのデータが新しく生まれていると記されております。今後も生成AIの普及に伴い、日々生み出される情報量は更に増加の一途をたどると思われます。また巷では、エビデンスが無いという見方が多くを占めるものの、現代人が1日に得る情報の量は「平安時代の人の一生分」と同じと言われたりするのも、私たちが日々の生活を通じてそれだけ膨大な情報に晒されていることを表現したものだと思われます。
そのような溢れる情報の中には間違った内容のものや、フェイクニュースと呼ばれる偽情報や、捏造記事なども多数存在します。情報にふれる際には、ファクトチェック、情報源の注意が必要であり、テレビ、新聞、雑誌などのいわゆるオールドメディアの情報を含め、全て鵜呑みにするのは避けたほうがよいでしょう。特に日本はメディアから発信される情報を信じる人の割合が世界の中でも高い傾向にある国であると言われています。
このような現状を踏まえて、資産運用を取り巻く世界で「インデックスファンドは信託報酬が低ければ低いほうが良い」という情報が溢れかえる現状について私なりの考えを述べてみたいと思います。
「良いインデックスファンドとは何ですか?」
さて、「良いインデックスファンドとは何ですか?」と尋ねられたら皆さんはどのような回答をされますか。私は間髪入れず「トラッキングエラーが限りなくゼロに近いファンド」と答えます。トラッキングエラーとはインデックスファンドが追随する市場指数(ベンチマーク)に対して、実際のファンドのパフォーマンスがどれだけ乖離しているかを示す指標であり、リターンの差の標準偏差(データのばらつき度合)で表します。ご存知の通りインデックスファンドは、対象とする指数の動きと連動する運用成果を目指すものです。対象とする指数の値動きを上回るのではなく、また下回るのでもなく、可能な限り同じであることがインデックスファンドとして良いファンドと言えます。 では、そのトラッキングエラーの要因となるものは何でしょうか。トラッキングエラーが生じる要因については複数ありますが、ここでいくつか挙げてみたいと思います。
投資信託の運用にかかる様々な費用を中心に考えるトラッキングエラーの要因
取引コスト
指数の構成銘柄が変更された際、インデックスファンドはそれに合わせて売買を行いますが、指数算出会社は指数内の銘柄毎の比率をデータとして変更するだけで、実際の有価証券の売買は行いません。売買には取引コスト(スプレッド、手数料)が発生するため、これがファンドのリターンを押し下げます。
外国証券の現地保管費用
外国株式や債券を取引する場合、売買手数料に加えて現地保管機関での保管手数料が発生します。先ほどの売買手数料と同様、指数ではこのような費用はかかりませんので差異が生じます。
為替取引
外国株式の取引においては為替取引が発生します。ファンドの価額を算出するには仲値を使用しますが、ファンドが取引をする際には売値と買値の差額(スプレッド)が生じます。
配当金や売却益にかかる税金
国内籍の投資信託は日本株式の運用において売却益が生じた場合、または配当金を受け取る場合には非課税ですが、外国株式の売却益や配当金には課税が行われます。指数算出ではこれら税金は考慮されないのでインデックスファンドと指数の騰落率には差が生じます。それ以外にもファンド・オブ・ファンズで外国株式の運用を現物ではなく海外籍のインデックスファンドやETFを活用する際にも、同じ対象指数であっても国籍が異なると各国の税制も異なるため同じ対象指数でありながら、どの国籍のインデックスファンドを選択するかによってパフォーマンスに差異が生じてきます。
未収金
保有している株式の一部には配当金の支払いがあります。配当金を受け取る権利が確定した翌営業日を配当落ちと言いますが、実際に配当を受取る日とは時間差があります。指数ではその時間差を考慮しませんし、ファンドでは配当金受取日まで同金額を投資することができませんので、その分の差異が生じます。
ポートフォリオ
指数算出会社が算出するインデックスと、それとの連動を目指すインデックスファンドのポートフォリオは必ずしも完全一致していないものも数多くあります。それは流動性の観点で組み入れが難しいもの、売買単位の制約により一致させることが難しいもの、外国株式では特定業種の保有禁止または規制、国内(日本)籍の投資信託が保有することを禁止しているものなどがあり、どうしても差異が生じてしまいます。
このため、インデックスファンドは、インデックス構成銘柄をすべて同じ比率で保有する「完全法」に加え、業種や規模などで分類したグループから代表銘柄を選ぶ「層化抽出法」、さらに統計モデルを用いてインデックスとの乖離(トラッキングエラー)を最小化する「最適化法」などを活用し、現実的な制約の中でもできる限りインデックスに近い運用を目指しています。
決済サイクル
株式や債券の取引の決済サイクルは国によって異なります。約定日+1営業日から3営業日まで様々ですので、複数の国や地域にまたがる指数を対象としているファンドの場合、リバランス時などには同一タイミングでリバランスを行うことができませんので差異が生じます。
設定・解約への対応
皆さまが取引できるインデックスファンドは追加型と呼ばれるもので設定(購入)・解約(売却)を比較的自由に行うことができます。お客さまからの注文によりファンドに対して資金の流出入がありますし、海外市場の休業日によっては予めに注文を出しておくこともあります。これによって指数との差異が生じます。
ファンドの現金比率
投資信託では常に一定の現金を保有しています。その比率は各社の各ファンドによって異なりますが、受益者への解約(売却)資金の確保、ファンドから信託報酬の支弁(支払い)、分配金の支払いなどに備える必要があります。投資信託の基準価額算出において信託報酬は毎日控除されるものの、委託会社(運用会社)、販売会社(直販部門、銀行、証券会社など)、受託会社(信託銀行)へは予め定められた期日にまとめて支弁されるので一定の現金保有が求められますし、その分、指数のポートフォリオとのずれが生じることとなります。
法定書類作成費用
投資信託を購入する際に閲覧が必要な目論見書、受益者(保有者)や購入検討者に対して必要な情報開示を行う運用報告書が該当します。これらの作成・印刷費用などは信託報酬とは別にファンドの信託財産から差し引くものもあります。
監査費用
企業が会計監査を受ける必要があるのと同様、投資信託においても会計監査が金融商品取引法により義務付けられています。会計監査に必要な監査法人報酬や会計士報酬は投資信託の信託財産から支払われます。
信託報酬が最安値であるファンドが “最も良いインデックスファンド ”なのか
それでは先に述べた「インデックスファンドは信託報酬が低ければ低いほうが良い」という見解について改めて考えたいと思います。投資信託の運用には信託財産から間接的に支払われる様々な費用が掛かります。そして日々算出される投資信託の基準価額は、信託報酬をはじめとした間接的な費用が日々控除された上で算出されるものであることを思い出していただきたいのです。インデックスファンドのファンドマネジャーは、様々な費用や要因によって対象とする指数との差異が生じることを所与の条件とし、信託報酬控除後の基準価額が指数の値動きと連動することを目指してトラッキングエラーの最小化に注力しているのです。しかし、各指数のインデックスファンドを比較した場合、信託報酬の低い順にトラッキングエラーが小さくなっているわけではありません。信託報酬の低さだけがインデックスファンドのパフォーマンスを決定づけるのではないということには注意が必要です。先に述べた「インデックスファンドは信託報酬が低ければ低いほうが良い」という見解について、信託報酬が最安値であるファンドが 最も良いインデックスファンドとは限らない、様々な要因から生じるトラッキングエラーを限りなくゼロに近づけ、対象とする指数の動きと連動するファンドこそが良いインデックスファンドである、と私は考えるのです。
では、どのようにして「良いインデックスファンド」を見つければよいのでしょうか?
次号では、選び方のポイントや注意すべき点について、詳しく解説していきたいと思います。
特集
セゾン共創日本ファンド第4期決算速報
セゾン共創日本ファンドは2025年6月10日に第4期決算を行いました。運用報告書に先立って、皆さまに決算概況をお知らせいたします。
- 当ファンドには、ベンチマークはありません。
- 分配を行っていないため、分配金再投資基準価額は表示していません。
- 表示されている基準価額が、ファンド運用の実質的なパフォーマンスを示すものです。
- 上記騰落率は、小数点以下第1位未満を四捨五入して表示しています。
ポートフォリオ
※2025年7月14日に公開された「セゾン共創日本ファンド」第4期交付運用報告書の内容に基づき、最新の情報に更新しております。(2025年7月14日)
ポートフォリオは33銘柄で構成され、将来の企業価値向上が期待できる企業に投資を行っております。各 銘柄の投資比率は、バリュエーション、ファンダメンタルズの状況、経営計画の進捗及び企業業績の確信度 などを総合的に勘案して決定しております。 当ファンドは、企業固有の成長要因に着目した運用を行っており、事業ポートフォリオや収益構造等の変化 に伴い、将来の企業価値の向上が期待される企業群、真に質が高い成長企業で構成されております。 業種別では、高い技術力が成長をけん引する資本財・サービス、強固なブランド力でロイヤルカスタマー を獲得し成長を続ける一般消費財サービス、新技術の創出や研究開発に貢献する情報技術、素材などの企 業を多く保有しております。 また、組み入れ対象企業との建設的な対話を継続的に行っており、成長戦略や資本政策など多岐にわたる テーマについて議論を重ねています。特に、成長戦略を支えるキャッシュアロケーションの妥当性や、成長戦 略の評価などについても深く議論しております。
今後の運用方針
※2025年7月14日に公開された「セゾン共創日本ファンド」第4期交付運用報告書の内容に基づき、最新の情報に更新しております。(2025年7月14日)
日本株式市場は外部環境の変化により大きく変動していますが、当ファンドは長期的な視座のもと、将来 の企業価値の向上に着目した運用を行っております。短期的な市場の変動に左右されることなく、引き続き 丁寧にボトムアップ・リサーチを行い、外部環境ではなく企業固有の成長要因に着目して、より長期的に利益 が成長する可能性を秘めた企業に厳選して投資を行ってまいります。 組み入れ銘柄数は30~40銘柄程度を目安としています。パフォーマンスの源泉は、現在の市場価値と将 来の企業価値とのギャップにあると考えており、バリュエーション評価を重視しつつ、企業の長期ビジョンや 中期経営計画などに着目して、企業固有の成長要因を洗い出しします。そのうえで、構造変化を遂げ再成長 が期待される企業や、質の高い成長を継続していくと期待される企業に厳選投資してまいります。 投資先企業との対話については、その企業が置かれた状況を尊重したうえで、資本市場から見える姿、理 想とする資本政策などについて議論を行い、市場価値を毀損しないようにお手伝いをしてまいります。企業 自ら資本市場にフェアに評価されるよう能動的に行動される際の一助となるべく、建設的な対話を継続して まいります。 受益者の皆さまとの対話については、運用報告会などを通じ、投資哲学や運用方針をご理解いただけるよ う努めてまいります。また投資先企業についても、「なぜその企業の株式を保有しているのか」、「その企業の どのような活動が社会の“共創”につながっているのか」などをわかりやすくお伝えし、受益者の皆さまが企 業を応援できるよう橋渡し役を果たしてまいります。
セゾン投信 出没録
石川・長野 編
今年度の出張セミナーは、石川と長野からスタート!関東は寒かったので「石川も寒いかな…?」と思いきや、まさかのぽかぽか陽気。日差しが気持ちよくて、移動も快適でした。
長野では地元のラジオや新聞で告知していたこともあり、「あ、広告見ましたよ!」という声もちらほら。地域とのつながりを感じられて、なんだか嬉しくなりました。
長野といえば、落ち着いた雰囲気が魅力。善光寺では、到着早々に雨に降られるというハプニングもありましたが、くるみ蕎麦を食し、お寺の静けさに癒されて、心がすーっと整いました。
投資クイズ100本ノック
今回は、○×クイズです
Q.投資信託を購入・売却する場合、指値注文(金額を指定して注文すること)ができる。(難易度:★)
- 〇
- ×
A. ✖
投資信託は指値注文ができません(ETFを除く)。値段(基準価額)がわからない状態で購入・売却の取引がおこなわれます。これをブラインド方式といいます。既存の受益者に不利益が生じないようにするために、この方式が採用されています。
〈セゾン共創日本ファンド〉銘柄のご紹介
グローバルに活躍する日本企業を、セゾン共創日本ファンドポートフォリオマネージャーの岩下が独自の視点でご紹介させていただきます!
セゾン共創日本ファンド
ポートフォリオマネージャー
岩下理人
住友林業(銘柄コード 1911)
住友林業は元禄4年(西暦1691年)に住友家が別子銅山を開坑して以来、333年にわたって「木」を軸としつつも時代のニー ズに合わせながら事業領域を拡大してきた企業です。
もともとは銅の精錬に欠かせない薪炭用の木材や、坑道の坑木、さらには採掘・精錬に従事していた人々の住む建築用木材の調達などを行っていました。
しかし、19世紀後半になると別子銅山 は過度な伐採と煙害によって周辺の森林は荒廃していきます。
当時の別子支配人であった伊庭氏は危機感を募らせ、1894 年「国土報恩」の思想のもと、保続林業という理念を掲げ、大規模な植林事業を開始します。
その植林事業は森林の維持・育 成や伐採・製材にも力点を置くことで、現在でいうサステナブルな山林事業へと昇華していきました。
その後も戦後の貿易自由化を乗り越えるために南洋材の取り扱いを開始、また拡大する住宅需要にこたえるために住宅事業に参入するなど、時代 のニーズをくみ取りつつ事業領域を拡大してきました。
年代に入ると人口増加が著しい米国、豪州と海外の住宅事業に相次いで参入し、現在では国産木材の利用にも取り組みつつ、名実ともに海外市場の成長をも取り込むグローバル企業へと変貌を遂げています
スタッフのつれづれだより
ダイレクトサービス部 M
突然ですが最近、趣味であるぬい活以外で楽しみが増えました。
学生の頃に始めた「弓道」を再開したことです。
卒業後も弓に触れる機会はありましたが時間を作ることが難しくなり疎遠になっていました。
ですが、最近スポーツを始めた方をきっかけに自分も弓に触れたいと思うようになり再開を決めました。
弓道は他のスポーツと比べると静かなイメージがありますが体力筋力、集中力、礼儀作法が身につきます。
さらに的に必ず中るわけではない為、忍耐力や精神力も鍛えられます。
弓道から学べる事がたくさんあるためブランクはありますが練習に参加できる日を毎回楽しみにしています。
今月の広報ちゃんねる
セゾン投信Meet Up!第4回を開催しました!
今回は東京大塚のカフェ「eightdays dining」を貸し切って、お客さまとスタッフが気軽に語り合える交流イベントに。
昨年から大好評の金融教育ゲーム「気まぐれLunch Time」では、楽しみながら分散投資の大切さを体感していただきました!
ランチを囲んでの懇親会では、初対面とは思えないほど会話が盛り上がり、あっという間の楽しいひとときに。
次回は大阪での開催を予定しています!noteで当日の様子をぜひチェックしてみてください。

編集後記
先日の6月12日、セゾン投信はおかげさまで創業19周年を迎えることができました。
ということで、社内では「あなたに感謝!THANKS祭り」社員同士で日頃の感謝を伝え合うイベントを開催。社長のワイン着ぐるみサプライズや、ワイン講座など笑いあり学びありで大盛り上がりとなりました。
このような、社内のつながりも大切にしながら、これからもお客様により良いサービスをお届けしていきたいと思います。
イベントの様子はnoteでもご紹介していますので、ぜひのぞいてみてください。
そして来年はいよいよ20周年!これからもセゾン投信をどうぞよろしくお願いいたします。
