【雇用保険の給付を受けると年金がカットされる?】
高年齢雇用継続給付と年金の関係について解説
公開日:
いつもセゾン投信のツブヤキを読んでいただき、ありがとうございます。
セゾンお金のこと相談室の前田です。
最近は60歳以降も働く人が増えてきました。ただ、再雇用で働いても賃金が30~50%下がったという話もよく聞きます。賃金が60歳時点に比べて低下した場合、要件に該当すれば雇用保険から「高年齢雇用継続給付」が支給されます。しかし、この給付金を受け取ると年金がカットされる可能性もあるのです。そこで、このコラムでは、高年齢雇用継続給付とは何か、給付金と年金カットの関係について、お伝えしたいと思います。
目次
高年齢雇用継続給付とは?
高年齢雇用継続給付は、次の要件を満たした場合に支給される雇用保険の給付金です。
- 60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者であること
- 60歳時点と比べて60歳以後の賃金が75%未満に減少したこと
- 雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
支給額は賃金の低下率によって異なり、低下後の給料に支給率を掛けて算出されます。賃金の低下率が64%以下なら支給率10%、64%超75%以下なら支給率0~10%で、具体的には、以下の表のとおりです。
| 低下率 | 支給率 |
|---|---|
| 75.00%以上 | 0.00% |
| 74.50% | 0.39% |
| 74.00% | 0.79% |
| 73.50% | 1.19% |
| 73.00% | 1.59% |
| 72.50% | 2.01% |
| 72.00% | 2.42% |
| 71.50% | 2.85% |
| 71.00% | 3.28% |
| 70.50% | 3.71% |
| 70.00% | 4.16% |
| 低下率 | 支給率 |
|---|---|
| 69.50% | 4.60% |
| 69.00% | 5.06% |
| 68.50% | 5.52% |
| 68.00% | 5.99% |
| 67.50% | 6.46% |
| 67.00% | 6.95% |
| 66.50% | 7.44% |
| 66.00% | 7.93% |
| 65.50% | 8.44% |
| 65.00% | 8.95% |
| 64.50% | 9.47% |
| 64.00%以下 | 10.00% |
出典:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001282595.pdf
例えば60歳時点の賃金が30万円、その後、賃金が18万円に下がったとします。低下率は60%ですから、支給率は10%です。よって給付金は18万円×10%=18,000円となります。
なお、「賃金」とは、60歳誕生日の前日以前6ヶ月の総支給額(実際に支払われた金額でボーナスを除く)を180日で割り、30日分に換算した金額をいいます。
賃金には、上限額と下限額が設定されており、上限額は508,200円です。そのため、賃金が上限額を超えている場合は、508,200円で計算されます。また下限額は90,420円で、上限額と下限額は毎年変わります。
高年齢雇用継続給付と年金の関係
次に、高年齢雇用継続給付と年金の関係について確認しましょう。高年齢雇用継続給付を受ける人が特別支給の老齢厚生年金や繰上げ支給の老齢厚生年金を受け取っていると、年金の一部がカットされる可能性があります。特別支給の老齢厚生年金とは、昭和36年4月1日以前生まれの60代前半の男性、昭和41年1月1日以前生まれの60代前半の女性が受けとれる年金のことです。老齢厚生年金の繰上げ受給とは、65歳前に老齢厚生年金を受け取ることです。
支給停止される年金額は最大で給料の4%相当で、以下の表のとおりです。
| 標準報酬月額60歳到達時の賃金月額 | 年金停止率 |
|---|---|
| 75.00%以上 | 0.00% |
| 74.00% | 0.31% |
| 73.00% | 0.64% |
| 72.00% | 0.97% |
| 71.00% | 1.31% |
| 70.00% | 1.66% |
| 69.00% | 2.02% |
| 68.00% | 2.40% |
| 67.00% | 2.78% |
| 66.00% | 3.17% |
| 65.00% | 3.58% |
| 64.00%以下 | 4.00% |
出典:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001282595.pdf
年金がカットされる具体例
では、ここで年金がカットされる具体例を見てみましょう。
- 60歳前の賃金が35万円
- 低下後の賃金が20万円(低下率64%以下)
- 厚生年金が月10万円
賃金の低下率は64%以下のため、高年齢雇用継続給付の支給率は10%です。したがって、給付金は20万×10%=2万円となります。
一方、低下率が64%の場合、年金停止率は4%です。20万×4%=8,000円のため、支給される年金は10万円-8000円=9万2,000円です。よって受取金額の総額は以下の通りです。
- 給料20万
- 年金9万2,000円
- 高年齢雇用継続給付2万円(非課税)
合計31万2,000円
給付金と年金の併給調整に注意
60代前半で年金を受け取るケースには、繰上げ受給と特別支給の老齢厚生年を受けるケースが該当します。繰上げ受給には、本人が申請して受け取るため、自分自身が繰り上げ受給をしている認識は持っているはずです。
しかし、特別支給の老齢厚生年金については、その存在を知らない人も少なくありません。50歳以上で特別支給の老齢厚生年金を受け取れる場合は、ねんきん定期便に金額が記載されています。60代前半に受け取れる年金が記載されていれば、特別支給の老齢厚生年金を受け取れます。
60歳以降給料が下がり、同時に年金を受け取る場合は事前に支給停止の対象になるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
年金やiDeCoの受け取り方、給料との調整など、相談が増えています。迷ったときはお金のこと相談室を利用してくださいね。お待ちしています。
\お金&ライフプランを相談できるアドバイザーが在籍/
ライタープロフィール
セゾンお金のこと相談室 前田 菜緒
1級FP技能士や夫婦問題診断士。「セゾンお金のこと相談室」のアドバイザーを務め、子育て世帯の人生を黒字化させることが得意。