この20年で、長期・積み立て・分散投資は「一般的な投資行動」へと変わってきた。
しかし、地政学リスクが高まるなど様々な要因で、インフレ、円安は容赦なく進み、さらには社会の多様化が加速するこの時代に、
わたしたちはどう将来に備え、どう投資と向き合っていけばいいのか。
その課題解決のために、運用会社としてセゾン投信になにができるのか。
弊社代表取締役社長 園部鷹博とファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子氏が「これからの20年」を語り合う。
Chapter 1
「生涯投資」の必要性が
この先さらに高まっていく
竹川:
日本人は長くデフレと金利のない世界で生きてきましたが、それが構造的に変わりつつあります。そうした中、園部さんは、生活者はどう対応したらよいと思いますか。
園部:
今後物価が上昇しインフレ率が年2%~3%で進むと仮定したら、それを上回るリターンが期待できる金融商品を資産として持たないと、実質的には資産が目減りしていくことになります。そう考えると、現在の預貯金の利率ではもちろん足りないし、日本国債(10年)の利回りでもインフレに対応できるかどうか分かりません。リターンの高さから考えると投資信託による資産形成の重要性がこれまで以上に増していくのではないでしょうか。
「投資にはリスクがある」と感じる方も多いと思いますが、これまでの歴史を振り返れば、世界経済は成長し続けてきたという紛れもない事実があります。企業は事業により付加価値を生み出し、利益を積み上げ続けることを重要な目標とします。その集合体としての株式市場、さらに資本主義経済とは「成長し続けるもの」なのです。
例えば、リーマン・ショックのときのように、短期間で大きく株式相場が下落し、その度に「もう世界はおしまいだ!」と悲鳴があがることもありますが、長期的には相場は回復し、株価は高値を更新し続けています。「失敗するような投資手法」がよくないのであって、経済そのものは「成長し続けている」ことを意識する必要があります。
竹川:
個人が最終的に受け取るお金は「投資元本×利回り×時間」の掛け算によって決まります。相場環境に左右されるため、最終的な金融資産の利回りは自分でコントロールできませんが、積み立てる金額を少し増やしたり、時間を長く取ったりすることはできます。時間を長くとるには、早く始めること、途中で止めずに長く続けることが大事です。
そういう意味では、なるべく若いうちから給与や報酬の一部を貯蓄や投資に振り向ける「しくみ」を作ってしまうことですね。リタイア直前になって、短期で一気に増やすのは難しいですが、20年、30年といった時間をかければ、必要な資金を準備することは可能です。今は「NISA」や「iDeCo」といった税優遇のある制度も充実しています。
園部:
あえて厳しいことをいいますが、現実から目を背けていると、20年後、30年後に「資産形成をしておけばよかった……」と後悔する可能性は高まっていると思います。平均寿命が延びたことで「人生100年時代」といわれる世の中です。物価上昇のリスクも相まって、老後に必要な資産額は不透明さを増しています。リタイアする年齢までにある程度の資産形成を行ったうえで、そこからは年金を受け取りつつ、不足分は資産を取り崩して生活することが求められると思います。その間も運用を継続し、保有資産を少しでも増やしていけることが理想です。つまりこれまで以上に「生涯投資」が求められているということです。
Chapter 2
資産形成は「目的」と
「運用方針」から始まる
園部:
では、資産形成の必要性に気づき、投資を始めた方々は将来が安泰かといえば、必ずしもそうとは言い切れません。大事なことは、資産形成の目的を明確に定め、そのための運用方針を決めることです。
竹川:
特に、直近10年はハイテク株を中心に米国株式市場の成長性がとても高かったので、「米国株に投資するインデックスファンドだけ買っておけば、大丈夫」という人もいます。また、最近気になるのは、どこの・何に投資をしているのか、投資信託の中身について関心がない、わからないという人も増えてきたことです。お金を投じる先はどこなのか、そして、株式市場が大きく下落した時、経済的にも、精神的にも耐えられるのはいくら(何パーセント)までなのかをイメージしておく必要があります。長期で運用するのであれば、金融資産全体でどうリスク管理をしていくのか、という視点も必要です。
園部:
そのとおりですね。
先のリーマン・ショックのように、株式相場は暴落しても長期的な視点で見ればいずれ回復するでしょう。それでも、大きな含み損に不安を感じ、ファンドを全て売却してしまう投資家は少なくありません。暴落時に自分がどこまで耐えられるかを考えるとともに投資先を分散したポートフォリオを作成することが重要です。
竹川:
運用実績の長い投資信託については、過去の最大下落率なども公表してくれるとよいですよね。例えば、公的年金の積み立て金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、基本ポートフォリオで運用した場合、過去の様々なショック、例えば、ブラックマンデー、日本のバブル崩壊、ITバブル、世界金融危機など〇〇ショックの時にどのくらい下落したかを率で示しています。世界金融危機(2007年12月末~2009年2月末)の時が一番大きくて、マイナス33%となっています。これくらいの金額を投資していたら、一時的にこのくらい下がる可能性があるのか、とイメージすることができます。
園部:
それについてはセミナーなどで情報提供を行っていますが、誰もが見られる資料として公開することも大切ですね。
私は資産形成を行うにあたり、お客さまには日々のニュースに一喜一憂することなく、淡々と積み立て投資をしていただきたいと思っています。投資は「がんばってするもの」ではなく、日常の一部として「自然と続けていくもの」になることが理想です。それが叶えられるファンドや投資環境をつくり、提供し続けることが、運用会社として貢献できることの1つだと考えています。
Chapter 3
インベスター・リターン
向上への取り組み
園部:
いま、国内では「NISA」の口座開設数が急増するなど、「資産形成の必要性」が認識されつつあります。しかし、ここで改めてお伝えしたいのは、投資はあくまでも資産形成の"手段"だということです。まずは「何のためにお金を育てるのか」という"目的"をはっきりさせておくことが大切ではないでしょうか。
目的が定まると、「いつまでに」「いくら」「どんな場面で」お金が必要になるのかが見えてきます。そこから逆算して、毎月の積み立て額や許容できるリスクの範囲、運用期間などを具体化していく。資産形成を着実に行うにはお客さまの人生設計に基づくマネープランが必要だと思うのですが、お客さまご自身やご家族だけでマネープランをつくるのは大変です。FP(ファイナンシャルプランナー)に相談するのも良いと思いますが、日本ではその選択肢がまだ十分に普及していないように感じています。
竹川:
まだお金について相談する文化が十分に根づいているとは言えませんが、徐々に変わってはきています。そうしたニーズにお応えするため、例えば、日本FP協会のウエブサイトでは「CFP® 検索ナビ」を提供しています。ご自分の住む地域や相談したい分野などからFPを探すことも可能です。
将来の必要資金について、メディアなどではモデルケースや平均値が「目安」として示されることが多いですが、今は働き方も、家族構成も、リタイアする年齢も多様化しているので、それらは役に立ちません。それより「わたしの場合は」「我が家の場合は」と個別に数値化して検証することが大事です。
公的年金や勤務先の退職給付制度などを確認したうえで、FPなどのアドバイザーの手を借りてライフプランや運用プランを策定するという選択肢も検討してほしいです。
園部:
ライフプランだけでなく、資産運用のポートフォリオも専門家に相談することは大事ですよね。特に身近に長期の株式投資などで成功している年長者がいる欧米では、IFA(Independent Financial Advisor)という独立系の資産アドバイザーがたくさんいます。「自分たちも相談に行けば成功の道が拓ける」という期待感を持ち、同じ成功を得るためにポートフォリオをアドバイザーに相談するという行動が定着している印象があります。
竹川:
資産運用のアドバイザーには、独立系の投資助言業者や独立系ファイナンシャルプランナー(FP)などもいます。投資助言・代理業の登録をするFPは増えてほしいですし、これからはコーチング型・伴走型のサポートも必要とされるでしょう。
大手投資調査会社の「モーニングスター」が毎年発表する「Mind The Gap」というレポートをみると、ファンドのトータル・リターンに対し、インベスター・リターンは世界的に低い傾向があるそうです。これは、パフォーマンスを後追いして人気のファンドを購入したり、売買タイミングを見極めることを意識しすぎて結果として失敗したりするケースもあるからです。
興味深いのは「ファイナンシャル・アドバイザーによる投資家のポートフォリオ全体へのアドバイスが定着している市場では、相対的に負のギャップが小さくなる(トータル・リターンとインベスター・リターンの乖離が小さい)傾向にあった」ことです。
*出典:「Mind The Gap(リターンのズレにご注意)売買タイミングに潜む落とし穴」(モーニングスター・ジャパン)
*トータル・リターン:ある期間における一括投資のリターン(時間加重平均の収益率)
*インベスター・リターン:ある期間において購入や売却など資金の出し入れを考慮した収益率(金額加重平均の収益率(または内部収益率))。平均的な投資家の売買行動を反映したもの
園部:
当社のファンドは2007年から2026年の約20年間で優れたトータル・リターンを創出することに成功しました。これは、「長期・積み立て・分散」投資の優位性と、当社のファンド運用の確かさを証明したと考えています。
そして、積み立て投資の継続を実践してくださったお客さまの利益であるインベスター・リターンは、ファンドの運用のリターン(トータル・リターン)を上回っています。
セゾン投信は運用会社ですので、運用力の向上が最重要かつ最優先です。これが担保されなければ投資行動の重要性をいくらお伝えしたところでお客さまからのご理解は得られません。どのような投資環境の変化が生じようとも一定の成果、つまり投資リターンを実現することが価値だと考えています。そのためには、当社のファンドが長期投資にふさわしい「時間耐久性」を備えられるよう、運用の一貫性と再現性を保つことが不可欠であり、これらを継続できるよう運用部門の人材強化を進めています。同時に、世界に目を向けてより優れた運用がないか、日本により良い企業がないかを常に探究し、目利き力の向上に努めています。
当社のファンドの運用力を高め、お客さまが積み立て投資を継続する、その2つがそろうことでインベスター・リターンの向上につながると考えています。
2022年より開始したFP資格保有者によるマネープラン全般のご相談をお受けするサービス(「セゾンお金のこと相談室」)では、下落局面でも慌てて売却せず、積み立てを継続しましょうといった、長期投資における適切な投資行動を具体的にお伝えすることができます。結果としてインベスター・リターンに寄与すると考えています。
Chapter 4
資産形成を楽しむ、
自分らしい投資の
あり方の追求
竹川:
セゾン投信が運用する投資信託のうち、2本は投資信託に投資するファンド・オブ・ファンズです。投資している先の運用会社、投資信託についてもっと知りたいという人も多いのではないでしょうか。「投資先の投信をどのような視点・基準で選んでいるか」「その投信を保有し続けるか否かの判断はどうしているか」――そうしたプロセスも含めて発信していってほしいです。
「セゾン・グローバルバランスファンド」は投資先の運用会社はバンガード社1社でわかりやすいですが、「セゾン資産形成の達人ファンド」は様々な運用会社・投資信託に投資しています。
園部:
そうですね。「セゾン資産形成の達人ファンド」はファンド・オブ・ファンズ方式で世界各地のファンドを通じて、「世界の良い会社に投資する」ことをポリシーとしています。
当社の「良い会社」の定義は、社会に不可欠な事業であったり、高い参入障壁を持つビジネスの優位性であったりするだけでなく、「企業文化」にも着目しています。
例えば、ある投資先ファンドには「児童労働や児童ポルノに関わる企業には投資しない」「核兵器に関連するメーカーには投資しない」といったポリシーがあります。こうしたファンドに定期的にヒアリングし、ときには直接訪問してオフィスの雰囲気や価値観、方針、実行性を確認しています。
竹川:
そういうお話をもっとお聴きしたいです(笑)。
Philosophy(投資哲学)、Process(投資プロセス)、Portfolio(ポートフォリオ)、Performance(運用実績)、People(運用体制)について、より丁寧な発信を期待しています。
投資している投資信託の魅力、運用している運用会社の特徴や哲学、投資プロセスや中身、運用チームなどについて、もっと"見える化"してもよいのではないでしょうか。ファンド・オブ・ファンズを通して「世界の良い会社に投資する」とおっしゃっていましたが、受益者にお金の行き先が見えるといいですよね。
園部:
「自分のお金がセゾン投信を通じて、世界の良い企業に届いている」という実感を得ていただくこと。これも、資産形成とは別軸で、日本の投資文化を普及・発展させていくうえで大事なことですね。
竹川:
そうですね。投資信託を通して、魅力的な会社を知る、いい会社と出会うきっかけになることもあります。そして、投信と長くお付き合いするためにも、運用力の強化を期待しています。
投資は始めて、続けて、最後は楽しく使うまででワンセットです。豊かに生きるために、長期的な視点で、資産形成・活用をしていきたいものですね。
園部:
竹川さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
人生100年時代のパートナーとして、お客さまの長期的な資産形成、資産活用に伴走するため、運用力の向上と世代を超えて信頼いただける運用体制の構築を着実に進めてまいります。
セゾン投信は、個人投資家の皆さまに「こんな選択肢があったのか」と感じていただける価値を届けるために、挑戦を重ねてきました。そのチャレンジ精神こそが私たちの原点であり、それはこれからも変わりません。世の中に無数にある運用商品や投資戦略の中から、思わず「おっ!」と驚き、納得していただけるような商品やサービスの提供などを行っていきたいと思います。誰もが経済的な不安のない、笑顔あふれる社会の実現に向け、次の20年も進化し続けてまいります。
Guest Profile
竹川美奈子たけかわ みなこ
LIFE MAP合同会社代表/ファイナンシャル・ジャーナリスト
出版社・新聞社勤務を経て独立。2000年にFP資格を取得。取材・執筆活動を行うほか、投資信託や確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)、マネープランセミナーの講師などを務める。2010年から個人投資家の草の根交流会「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」の共同幹事を務めるなど、資産形成と投資のすそ野を広げる活動にも取り組んでいる。『大改正でどう変わる? 新NISA徹底活用術』(日本経済新聞出版)、『一番やさしい!一番くわしい!個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』(ダイヤモンド社)など著書多数。