『米国株でしょ』と思う前に知っておきたいアメリカの今
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こんにちは!気になる金融の“あれこれ”を発信するコラム「〇(まる)の部屋」の“まるこ”です。
NISA口座を開いたものの、「何に投資すればよいの?」とファンド選びに迷う方も多いのではないでしょうか。
そんな時に「米国株インデックスだけで十分!」といったSNSなどのメッセージは確かにわかりやすいですね。
しかも米国は世界最大の経済大国だし、「やっぱり投資するなら米国でしょ」と思ってしまうのも無理はありません。
ただ、「私たちが投資先として目にする米国」と「そこで暮らす人々が見ているアメリカ」は、必ずしも同じではなさそうです。
そこには、好調な株式市場だけでは見えにくい、物価高や金利上昇、住宅の問題があります。
今回は、まもなく行われる中間選挙を手がかりに、アメリカが抱えているもう一つの現実を見ていきたいと思います。
※本コラムの内容は、各種報道をもとにセゾン投信が作成したものです。
中間選挙の争点は株価ではなく人々の不満
いまアメリカを見るうえで気になるのが、2026年11月に行われる中間選挙です。
ちなみに、中間選挙は議会の議員を選ぶ選挙で、大統領を選ぶわけではありません。
ただ、アメリカでは予算や減税などの重要な政策を、大統領だけで決めることはできません。
実際には議会の承認が必要になるため、大統領の政党がどれだけ議席を確保できるかが、その後の政策運営にも大きくかかわります。
だからこそ注目されるのは、有権者がいま何を求めているかです。
株価やAIブームよりも、多くの人々にとって切実なのは今の生活そのもの。
なかでも、毎日の暮らしに直結する物価高が、人々の不満につながっています。
これこそが、共和党と民主党のどちらが主導権を握っても向き合わなければならない、アメリカの根深い課題のひとつです。
物価高という重荷
米国の株式市場は好調です。
でも、その恩恵を十分に感じられない人も少なくありません。
特に中間層や低所得層を中心に、食品や住宅、光熱費など生活に直結する物価の上昇が続き、家計の負担感は依然として大きいままです。
前回2024年の大統領選挙でも、生活コストの上昇に不満を抱く幅広い有権者がトランプ氏に票を投じたといわれています。
そのため、トランプ政権にとっても、こうした不満を和らげることは重要な課題となっています。
でも、大統領が「明日から物価を下げます」と宣言しても、すぐにインフレを抑えられるわけではありません。
金利政策を担うFRB(連邦準備制度理事会:米国の中央銀行)も、物価と景気のバランスを取りながら難しい対応を迫られているのが現状です。
財政政策という手段
そこで政権が取り得る手段になるのが、「財政政策」です。
物価をすぐ下げることはできませんが、減税や補助金、エネルギー支援などによって、家計の負担を和らげることは期待できます。
実際、トランプ大統領は、中間選挙で共和党が勝利した場合、成人市民に1人5,000ドルを支給する構想を打ち出しました。
ただ、こういった政策にはお金、つまり予算が必要です。
予算を確保するためには、議会の承認が前提となります。
だからこそ、中間選挙の結果がその後の政策運営に影響してくるわけです。
問題視される金利上昇
こうした財政政策は別の問題を引き起こします。
政府支出の拡大や減税は、財政赤字の拡大につながる可能性があります。
そもそもアメリカは世界最大級の債務(借金)を抱える国です。
さらなる財政赤字の拡大や国債発行の増加は、長期金利をなお一層押し上げる要因となりえます。
「インフレ対策のために財政政策を進めたい。」
でも、
「その財政政策が金利上昇を招く可能性もある。」
これこそが、いまアメリカ政府が直面している難しいジレンマです。
金利の上昇は株価や経済だけの話ではありません。
アメリカでは「家を買う」「住み替える」といった人々の人生設計そのものに影響する問題でもあります。
アメリカの金利上昇が生活に及ぼす影響
金利上昇の影響は、住宅や自動車、日々の買い物など、人々の生活のさまざまな場面に広がります。
住宅ローン金利上昇で変わる人生設計
なかでも深刻なのは、住宅ローンへの影響です。
金利が上昇し毎月の返済額が増えれば、家計の負担も重くなります。
さらに、住宅そのものの取得にも影響が及びます。
アメリカでは、ライフステージに合わせて住宅を住み替える人も少なくありません。
住宅ローン金利が上昇すると、こうした住み替えのハードルは一気に高まります。
若い世代は初めての住宅購入をためらい、子育て世代は家族構成の変化に合わせた住み替えを見送りがちになります。
また、アメリカでは30年固定金利の住宅ローンが広く利用されています。
低い金利で借りている人にとっては、新たに高い金利でローンを組むことは避けたくなります。
シニア世代でも、新たに高い金利でローンを組むことを避けるため、小さな家への住み替えを見送るケースがあります。
そうなると、中古住宅の供給が減り、住宅価格を押し上げる要因にもなります。
アメリカの人々が思い描いていた人生設計そのものを変えるほどの影響ともいえそうです。
自動車や日用品にも及ぶ金利上昇
自動車社会といわれるアメリカでは、自動車ローンの金利上昇による家計への影響はより深刻です。
また、日用品などの購入でもクレジットカードのリボ払いが利用されているため、金利の上昇は日々の生活の負担にもつながります。
トランプ政権は、このような金利上昇に対する人々(特に中間層)の不満に、危機感を募らせています。
S&P500が映さないアメリカの現実
その一方で、米国株は好調といえます。
AIや半導体関連企業などの株価の上昇で、資産を保有する人々の中にはその恩恵を受けた人も少なくありません。
しかし、ここまで見てきたように、多くの人々にとっては、住宅費や生活コストの上昇の方が切実な問題です。
「S&P500に投資している人が見ている米国」と、「生活に苦しむ有権者が見ているアメリカ」は決して同じ景色ではなさそうです。
米国経済に「簡単な答え」はない
こうした問題は、今回の中間選挙でどちらが勝っても、あるいは次の大統領が誰になっても簡単に解決できるものではありません。
インフレを抑えたい。しかし景気も守りたい。
財政赤字を減らしたい。しかし支援も必要。
アメリカはいま、そうした難しい課題に向き合っています。
最後に:米国株が良いか悪いかではない
このコラムを読まれても、「それでも私は米国株中心で投資をしたい」と考える方もいらっしゃるでしょう。 それは決して間違いとは言えません。
今回お伝えしたかったのは、米国株が良いか悪いかという話ではありません。
見ていただいたように、投資先として見えている米国とそこで暮らす人々が直面しているアメリカは必ずしも同じではありません。
「米国株だけで十分」という言葉を鵜呑みにする前に、アメリカの現実にも目を向けてみる。
そんな視点を持つきっかけになれば嬉しく思います。
ここで取りあげた課題以外にも、アメリカにはさまざまな側面がありそうです。
投資先としてだけでなく、その背景にある人々の暮らしや社会の変化にも目を向けながら、これからも「アメリカの今」を一緒に見ていきましょう。
(まるこ)
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ライタープロフィール
まるこ
全国津々浦々、年間400件を超える勉強会やセミナーで資産運用の本質を伝え、いまやセゾン投信のベテラン社員に。バブル崩壊にリーマンショック・コロナショックなど金融業界の荒波にもまれつつ、投資信託はもちろん、債券・株式・為替・リートなど様々な金融商品の開発・販売を経験。執筆は初挑戦ながら、経験から培った専門的知識と持ち前のおせっかい気質で金融トレンドやお役立ち情報を発信していきます。応援よろしくお願いします。
