【解説】トランプ関税は誰トク?貿易赤字・中間選挙って? ~MAGA(マガ)・TACO(タコ)・減税案とマスク~

こんにちは!「〇(まる)の部屋」 の“まるこ”です。今日のお題は、「ゆくゆく・おいおい」とお伝えしていた米国関税について!わかっているようでちょっと曖昧といった言葉も解説していきます。
※2025年6月11日現在、各種報道をもとにセゾン投信が作成したものになります。(以下同じです。)
まずはトランプ・ショックからの振り返り
4月2日:トランプショック
トランプ大統領がアメリカの関税の大幅引き上げを発表。
4月9日:中国を除く多数の国に対して相互関税の適用を90日間停止。
5月12日:中国への相互関税率を引き下げ、中国側も同様の措置。
協議継続のための枠組みを設置。
その後も、EU(欧州連合)に対して50%の関税を発表後に延期、また鉄鋼アルミ関税「倍増50%」が署名されるなど、アメリカは世界各国と個別に交渉を行っているものの、いずれも難航しているようです。
この機会に原点回帰、トランプ関税に関わる政策や言葉を確認していきましょう。
~今日のお品書き~
そもそも関税とは?
そもそも関税を支払うのはアメリカの会社です。
例えば、こんなイメージです。(数字は仮定です)

となれば、結果、米国内の販売値段が上がる、業者が関税を負担する、となりそうです。これって米国にとってうれしいの?って思っちゃいますよね。
高くてもどうしても海外から購入しなければいけないものもあるし、つられて米国製品が値上げされたらたまったもんじゃない。米国ブランドといっても部品は輸入品だったり、外国で生産されて米国内に輸入されていたりする場合は、関税が自分(米国市民)に跳ね返ってくるんです。
関税は誰トク?
じゃあ、誰トクかというと、米国の輸入会社が支払う関税は、実質、国(政府)の収入になるんです。国のお財布に入る、というわけです。
保護主義だけど米国市民は保護されていない?
一般に、関税政策は自国の産業を守ろうとする保護主義・自国主義の一つといわれていますが、実際はメリット・デメリットの両方の可能性が混在していて、諸刃の剣(もろはのつるぎ)ともいえます。(下図ご参照)
トランプの関税政策
想定される米国での影響
メリット
国内産業の保護
雇用の創出
貿易赤字の削減
デメリット
- 消費者:物価上昇
- 企業:コスト増加
報復関税のリスク
・各種報道よりセゾン投信作成。一般的に想定される影響の一例であり、これに限りません。
トランプ関税の目標は?
一見乱暴に見えるトランプさんの関税ですが、正しいか、成功するか、は別として、その裏には以下のような目標があるとみられています。
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① 貿易赤字の削減。
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② 減税のための収入源:関税の収入を財源に。
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③ 外交上の駆け引き(ディール:取引)のための切り札 例えば、防衛費の負担。
貿易赤字とMAGA(マガ)
貿易赤字とは、貿易で輸出(販売)するより輸入(購入)が多い、つまり、私たちのお財布で考えると受取より支払いが多く“赤字”になっている、ということです。
割安な外国からの商品がどんどん米国に入ってくる一方で、海外では米国製品は売れない、結果、米国内では「もの」を作る力がどんどん弱くなっていき、そこで働く人々の生活もどんどん苦しくなっています。
トランプさんのスローガンMAGA(マガ)の背景には、このような、特に鉄鋼や自動車などの製造業で働いてる白人労働者層の生活が苦しいことや、彼らがトランプさんの大きな支持層であることがあります。

MAGA(Make America Great Again!)
~米国をふたたび偉大に~
TACO(タコ)と呼ばれるトランプ大統領
トランプさんのめざす目標はそれなりに意味がありそうですが、最近はコロコロ方向転換していることから「TACO(タコ)」とよばれ出しました!

TACO(Trump Always Chickens Out)
~トランプはいつもビビッてひっこめる~
トランプさんのTACO(タコ)化の背景には様々な要因がありそうですが、来年の中間選挙の影響も考えられます。
中間選挙とは?
大統領の任期は4年ですが、2年に一度(大統領選挙後、偶数年の11月)上院・下院の議会選挙がおこなわれます。
※上院議員の3分の1、下院議員の全員が改選。2026年11月3日(予定)
トランプさんが好き勝手をやっているように見えますが、実は政策の実施には、多くの場合、議会の同意が必要です。現在は、両院ともトランプさんが所属する党である共和党が多数を占めていますが、来年の中間選挙で、両院またはいずれかで民主党多数になると、トランプさんはやりづらくなります。いわゆる、レームダック化してしまうわけです。※レームダック:任期中に政治的影響力を失った政治家のこと。
これまで「御意!」だった共和党の議員も議席獲得に不利となるようなトランプさんの言動には厳しくなるかもしれません。
大規模減税法案からはじまった大喧嘩
トランプさんが「1つの大きく美しい法案」(One Big, Beautiful Bill)と自画自賛した米国の大規模減税法案は、まさに中間選挙に向けて大大アピールしたい大事な法案のはずです。その法案に、ラブラブに見えたイーロン・マスクさんが痛烈な批判をしたことで、SNS上で、大統領と大富豪の大喧嘩が繰り広げられる前代未聞の状況も見られました。マスクさんの指摘は別として、法案の景気刺激力の弱さ、所得格差の拡大など問題点を指摘する声もあります。
このまま操縦不能なトランプ政権が続けば「レームダック化」が見え始めるといったコメントも見られます。
米国の実態はFOMCで確認
6月14日のトランプさんの誕生日での軍事パレードや6月15日から17日のG7(先進国首脳会議)、7月4日の独立記念日に向けてどんなアピールが繰り広げられるか、も話題になりそうですが、注目したいのは、6月17日・18日に開催予定のFOMC(連邦公開市場委員会)です。FOMCとは米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が金融政策を決定する委員会です(日本の中央銀行は日本銀行=日銀)。米国の雇用やインフレの状況を独自に分析し、金融政策(利下げや利上げなど)を決定します。FRBのパウエル議長は、トランプさんに遅すぎた男!と揶揄され早急な利下げを迫られていますが、独立した機関であるべき中央銀行として、市場や相場とは別に、客観的に米国経済の状況をどう分析し判断するのか、その点を確認したいと思います。
当面、トランプさんのTACO踊りは続くかもしれませんが、それに右往左往するよりも、客観的な米国の状況や課題についてしっかりと目を向けるほうが大事だとまるこは思っています! 今回はここまで。また次回よろしくお願いします!
(まるこ)\あわせて読みたい/